7年後,マレーシアから帰って,本格的に写真を始めた.偶然にも

見つかった当時のネガは,適切にラボでプリントし直され,その本来

の色を取り戻した.あの時,あの景色との出会いは偶然だった.あの

景色との出会いは,偶然にあたえられた,ささやかな幸せだと思って

いた.しかし,実際に捜し求めれば求めるほどそれは本当になかなか

手に入らない出会いであることを知った.何年もの空白の後で,僕は

時の流れがもたらす恵みと,写真の力を知った. 

 昔,僕は,アートとは関係のない人間だと思っていた.田舎者で,

そんなものは自分とは違う人々がやるものだと思っていた.そういっ

たことに自分が関わることを,気恥ずかしくさえ思っていた.しかし

あの時の自分は,つき動かされるように走った.走って,走って,そ

してシャッターを押した.

 あの瞬間の感情が,僕がアートに関わる原点であるとすればその感

情を満たそうとすることは,本当に自然であることの様に思える.出

会った場面,感情,心のゆらぎ.

 表現したいと思うことは僕の本能(NAKED SPIRITS)にほかならない.