走って,走って,丘の上にあるキャンプサイトを目指した

どうしてこの瞬間を写すことにこだわったのかわからない.

なぜ,当時写真を趣味にもしていなかった僕が偶然おやじの

カメラを持っていたのかも,覚えていない.ただ,何かにつ

き動かされるようにして,僕は階段うえのテントを目指した

 慣れないカメラを抱えて戻り,肩で息をしながらシャッタ

ーを切った.                      

 スピードプリントでプリントされたその写真は本来の色

ではなく,同じように記憶の中の色も月日とともに記憶のか

なたに薄れていった.                 

 

 そしてしばらく,僕は写真を撮らなかった